Vol.4 ワインリストのつくり方

ワインリストはソムリエの仕事が形となったものであり、ワインリストを自らの手で作れることは非常に幸運なことです。

2017年、HUGEコーポレートソムリエに就任して最初の大仕事が5月に渋谷にオープンするリゴレットのワインリスト作成でした。店舗イメージを見せてもらうと、なんとワインセラーがバーカウンターの頭上、天井から吊り下がっているのです。こんなセラーをみたことがありません。それもかなりの大きさです。

渋谷 The Rigolettoのワインセラー

HUGEはダズル、新丸ビルRigoletto、六本木Rigolettoを始め、ワインセラーが印象的な店舗が多く、銀座コリドーのセラーはリフトで上がってゆくシステムと凝りに凝っているので、そんな期待と予想を遥かに上回るものでした。

RigolettoHUGEを代表するブランドでどの店も大変繁盛していますが、11店舗以上は増やさないというポリシーがあり、この渋谷のRigolettoがその11店舗目、「The Rigoletto」と名付けられました。

メニューは肉料理をメインとし、様々な部位の牛肉から鶏、豚、ソーセージ。さらに日本では規制が厳しくハードルの高い、タルタルステーキまでと、「肉屋さんがRigolettoを始めたら」というコンセプトです。

The Rigolettoのグリルプレート

そんな肉料理が楽しめるワインを揃えようと、全部赤ワインにしてしまおうかとも考えたりもしていましたが、新川さんから思いもよらぬアイディアが出ました。

「石田さん、Rigoletto全部変えちゃおうか!」

新店舗のためだけにリストを作るのではなく、Rigoletto11店舗のリストとなるグランドワインリスト作るということです。

11店舗のワインリストを同時に変更する、そんなホテル、レストランはないでしょう。ふつう在庫が気になります。ホテルでシェフソムリエがこんなことを始めたら、責任を追求され、ヘタをすると職を追われることにもなりかねないでしょう。

Rigolettoのワインリストが一気に刷新され、石田博のセレクトになる。ジャイアント・ステップだ!!」と新川さんは高笑い。

なんと豪快なリーダーでしょうか。

豪快な笑顔。The Rigolettoのワインセラーにて

Rigoletto全店のワインリストを見直してみると、手を入れるのをためらうほどに、よくできたラインナップでした。私の頭のなかには、不良在庫を作ってはいけないという懸念もありました。

「現行のラインナップを基にリニューアルをかけてゆきたいと思います」と新川さんに伝えると、

「そんなこと言わないで、全面的にやってよ!」と返されてしまいました。

そして、

「ワインリストには石田博のサインを入れよう!あと、リストのタイトルはThe World、世界をみてきたからこそのワインリストにしてください」

The World、、、すごいタイトル。テンションが上がる一方で、「ちょっと大きく出過ぎじゃないかな、、」とハラハラもしました。

「ワクワク、ドキドキする仕事をする」はHUGEの理念の一つです。

「HUGE 10の約束」のトップにこの理念が。

世界を俯瞰したリストを作るなら、ブドウ品種毎にラインナップするのがよいと、カテゴライズしました。ChardonnayからSyrahまで。土着品種、品種ブレンドのカテゴリーも作り、独自性を出しました。この作業は非常に楽しいものです。世界を旅する気分で選んでゆきました。

私の考える、よいワインリストとは以下の通りです。

(コンセプト、料理、お客様、サービス)に合っていること。

売れるリストであること。

メッセージがあること。

見やすいこと。

正確であること。

出来上がったThe Worldはプレミアムワインを約100アイテム、カジュアルダイニングとしては圧倒的な数です。全店長、チーフにリスト説明会を開きました。ワインリストを実際に使うのは現場です。彼らがしっかり理解してくれないといけません。

HUGEで初めてのリスト作成でしたから、いちまつの不安もありましたが、Rigoletto全店で非常によいセールスをあげてくれました。

新川さんから明確なディレクションが示されたことは非常に有難く、メッセージのあるリストになりました。

そしてもう一つ、私が非常に気に入っているのはデザインです。フォントや用紙、背景のデザインも大変よいのですが、観音開きという様式が特によいと思っています。

HUGEにはハウスワインセレクションというエクスクルーシブワインのラインナップがあります。リストを開くと、まずハウスワインセレクション。ワインのラベルが載っていて、簡単な説明もあり、気軽に選ぶことができます。

そして、さらに開くとThe World、世界が開かれるのです。

リストを開くとグラスワインとハウスセレクション

開くと、The World!

そして、三ヶ月に一度ほどのペースで更新されます。終売したワインに×印や取消線が引いてあるワインリストを私は好きではありません。後々スペルや表記ミスも見つかります。

社内のデザインチームのおかげで、清潔で正確なワインリストが実現しているのです。

「よいワインリスト」の条件をみると、The Worldが強化してゆかなければならない点があります。「店のコンセプトに合っていること」です。Rigolettoという店のコンセプトによりフォーカスすること必要があると感じています。そこには新川さんも感じるところがありました。

The World誕生から約4年、先月早くも大幅にリニューアルをさせました。もちろん11店舗同時に。それについてはまた今度お話しさせてください。

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