Vol.7 メキシカンとロゼ


近年のロゼワイン人気は目覚ましいものがあり、ワイン業界ではもはやブームや一過性のものではないという認識にすらなっています。

それほどまでに人気となった主な理由として、新しい消費者層と彼らの価値観、そして食事の変化が挙げられます。

ミレニアルズと呼ばれる世代(1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代。20代前半から30代後半)は、カジュアルで親しみ易いものを好むといわれます。

また生まれた時からワインがある食卓をみて育った彼らにとって赤ワインは「おじいちゃん、お父さんが飲むお酒」という存在だったともいえます。

ロゼワインは飲み易く、たいていはリーゾナブルな価格、色も可愛らしいし、写真映えもする、そういった特徴が受け入れられました。

また食事もアペロ、ピクニック、グランピングなど軽く、フィンガーフードやフォーク1本で食べ易いものが人気となります。そういった食事にもロゼは雰囲気を含めてぴったりの飲み物なのです。

                          ◆                     

HUGE2010年のMucho(丸の内)を皮切りに5店舗のメキシカンを展開しています。ユネスコ無形文化遺産にも登録され、タコスやナチョスなどよく知られるメキシコ料理ですが、日本での店舗数は少なく、外食の選択肢としては非常に認知度が低いといえます。食べログで検索すると、東京都のイタリア料理や日本料理が約6,000(和食だと約38,000)に対して、200軒足らずと、その少なさが分かります。

そんななかいずれの店舗も盛況で、特に若いお客様を中心に盛り上がっています。飲み物はというとビール、ラテンカクテル、テキーラが人気です。

ある日、店長の岩佐敦司さん(当日アシエンダ・デル・シエロ。現Rigo Hawaii代表)から相談を受けました。

「メキシカンでワインはどう展開してゆけばいいのでしょう?」

                          ◆                     

先述したロゼワイン人気の話は日本では完全には当てはまりません。欧米ではミレニアルズ世代がワインシーンのトレンドに重要な存在になっていますが、日本のワイン愛好家層は圧倒的に5060代になります。

バブル世代ともいうこの年代はオーセンティックなもの、ブランド力の高いものを好みます。もちろんロゼを全く飲まないとはいいませんが、欧米のようにワイン売り場をロゼ一色に染めるほどのものではありません。

カリフォルニアのワイナリー巡りの道中、街で「Tacos & Wine」という看板の店をよく見かけました。土地柄、メキシコ人が多いというのもあるのでしょう。無意識に「メキシカンとワイン」は私の頭に擦り込まれていました。

                         ◆                     

「ロゼワインはどうですか?」

メキシコ料理はスパイスを多用します。そういったピリ辛料理にはロゼが非常によく合います。サルサにもすごくいい。

イタリアンなどで「さあ、ワイン飲むぞ!」というお客様にロゼワインをお勧めしても、「せっかくだから赤ワインがいいな」となりがちです。

でもメキシカンでは、ビールやカクテルというドリンクの選択肢にロゼは上手くはまるのでは、と思ったのです。

アシエンダ・デル・シエロは特に若いお客様が多い。そんな彼らに未来のワイン愛好家になってもらえるのもとてもよいことだと思いました。

岩佐さんは

「右手にロゼ、左手にタコス!」

をキャッチに楽しくお勧めしよう、と言ってくれました。

料理とワインの相性ということではなく、タコスとロゼは雰囲気含めて、本当によく合うと思います。

現在、メキシカン全店でロゼをバイザグラスで用意しています。

「今日はいつも違う飲み方にしようかな」と、思い立たれたら、ぜひロゼワイン、お試しいただきたいです。

 

関連記事一覧